1 早期解決
労働審判での和解、つまり調停の成立率は、おおむね7割くらいと言われています。ですので、多くのケースでは、話し合いで解決できていることになります。
労働審判は、時間的な制約があり、口頭を中心に手続が進むため、通常の訴訟ほど精密に審理されるわけではありません。労働者側が訴訟ではなく労働審判を選択するとき、請求したい額の満額でなくても、ある程度のところで早期に和解し、解決することを目的とすることが多いです。
会社側も、訴訟に移行して長期化し、不利な判決が出るリスクも考慮したうえで、早期解決を目指すことにはメリットがあります。そのため、メリットの1つ目は、早期解決ということになります。
2 支払名目を解決金にできる
次に、和解では、支払の名目を、未払賃金などの責任が明確な表現ではなく、解決金にすることが可能です。
解決金について、確たる相場はありません。給料の何か月分という考えで行われることが多いと思います。労働者と会社の双方について、どちらがより有利に労働審判を運ぶことができたかによって、変わるものです。たとえば、労働審判委員会が、会社に有利な心証を抱いていれば、解決金は低い方向になります。逆に、会社が不利と考えられていたら、解決金は高くなりやすいです。
労働審判に弁護士を依頼している場合には、弁護士も期日に出席していますから、裁判所の心証具合などを参考に、提示額等を決めていきます。
3 口外禁止条項
さらに、口外禁止条項を合意すれば、和解に含めることもできます。会社としては、ある労働者から労働審判を申し立てられて、何らかの金銭の支払いをしたとなると、他の従業員に波及し、さらなる労働審判等を招かないかが気になるところです。口外禁止となれば、他への波及を防止することができます。これが審判や判決となると、口外禁止条項は入りませんので、和解ならではの成果となります。